久しぶりに本を読んだ。
ここ数年は家庭の事情や、コロナの影響など、どうにも本を読むということに対しての集中力が欠く状態が続いていた。そんな状態であったので久しぶりに本を読んだ感覚を味わえて少し晴れやかだ。
本を読むことに飢えていた大学生時代は、一日に2、3冊読んだ時もあった。
「むしゃくしゃしてやった、誰でもよかった」
通り魔の言い分のように片っ端から目に入る本を読み漁った。
本を読むほどに自分の嗜好が形成され、本棚はいつしか純文学と呼ばれるような古い作品ばかりになってしまった。漱石、川端、大江、三島、国語の教科書に載ってるような作家たちばかりだ。
そんな古い作品ばかり読んでいると、逆に現代作品が読めなくなったりする。同じ日本語であっても言葉が入ってこない。醤油ラーメンばかり食べてて、塩ラーメン食べるとその良さがわからないといった感じか。
朝井リョウもそんな、塩ラーメンのような作家だった。
正欲
久方ぶりに読んだ氏の作品は、しっかりと読み応えのある円熟味のある作品だった。青基調とした装丁とは裏腹といえばいいのか作品のイメージは赤だ。
学生時代、古い作品を読んで抱いた感想
おもしろい、ただそれを感じた。
朝井くん、以前の君の作品を、僕はどうしても読むことができなかった。それは同い年の君の言葉が、僕と近すぎたからなのかもしれない。
リアルすぎる言葉は、読書として捉えられない君の文章が素晴らしいほどに、目をそらしたくなってしまった。
それでいえば、正欲、この本は言葉がシンプルに入ってきた。さっき円熟という言葉を使ったがもしかすると僕の感性が鈍っただけかもしれない。
朝井くん、僕らも34だ君は円熟味を増し、僕はただ衰えていく
そんな気づきすらうれしい。いい本だったと思うよ。