掃き溜めに酒

書いてみる、書きたいと思ったことを

ディーコン・ディーコン②

初心者が楽器を購入する時、多くの人は教則本も併せて購入するだろう。

 

 「楽器は手に入れた!あとはこの本を読んで練習あるのみだ!」

 

 といった感じで、希望に満ち溢れたスタートを切っても、残念なことに早々に躓くことが多いのがギターという楽器なのである。一日一歩、三日で三歩。三歩目に所謂「Fコード」という反り立つ壁があり、その前には、そこで力尽きた多くの人間の亡骸が転がっているわけだ。ただ、壁の近くには別の道に通じる分岐が点在し、筆者はその一つの分岐を通りベースの道を歩むようになるわけだ。

(ギター=独学という考えを何故か持っていたが、最初から人に教わった方がいいと今は思う)

 

弾けないギターをジャカジャカと鳴らすだけの日々。ギターを弾いて女の子にキャーキャー言われるという淡い夢も潰えたそんなころ、TVドラマでQUEENの楽曲が起用され、ベストアルバムが発売され爆発的ヒットとなっていた。当時の筆者にとっては音楽=日本のバンドであり、洋楽を聞くこと自体、ほぼ無かった。(家には父親のCDが少しはあったビートルズストーンズツェッペリン、クラプトンなど聞くことはあっても、そこまで深くは聞いていなかった。洋楽をたくさん聞くようになるのは高校生になってから)

そんな田舎の中学生にまでその時のQUEENブームは届いたのだから日本中で大流行していたのだろう。連日TVで取り上げられ、CDも売り切れるところもあったくらいだ。実際、現在のQUEENブームよりも、当時のほうがより強かったような印象を個人的には持っている。

 

そうしてQUEENを聞いた中学生はベースという楽器の存在を初めて意識することになった。それまで聞いていたバンドにおいては、ベースというのは「ルート弾き」が主であった。それは音の厚みもたらすことを主としたプレイであり、もちろんそれもベースという楽器の役割としても重要なことだが、結果的にはベースがギターよりも地味だという印象を持たせるようなものだった。一方、ジョン・ディーコンのベース「I was born to love you」のイントロで聞こえてきたそれはベースに対するイメージを塗り替えるには十分だった。ハイポジション使ったメロディアスな音、ギターよりも太く丸いその音が耳にごく自然に入ってきたのだ。