今年の桜は早いのだろうか。
川沿いを桜が埋め尽くす人気のスポット。
多くの人々が桜を楽しみながら歩く。
折り畳み椅子に座った、一人の老人。
キョロキョロと道往く人を眺めて、誰かを待っているようだ。
春の優しい日差しが老人を微睡へと誘う。
うとうと、うとうと
桜を散らす風が通りぬける。
目を開けて、老人が周囲を見渡す。
その人は見つからない。
現実に待ち人が現れることは、きっと無いのだろう。
いつかの思い出の桜の下の微睡。
その中で老人と待ち人は、再会を果たしている。
根拠はない。でも、そう確信した。
理由は春にでも聴いてほしい。