掃き溜めに酒

書いてみる、書きたいと思ったことを

ディーコン・ディーコン⑤

4年。

それは筆者が一人でベースを練習していた時間だ。バンドができたのは大学生になってからのこと。そう考えると「バンドをやる」ということも大学に行く目的の一つだったのかもしれない。

 

バンドサークルといっても多種多様で、私の通った大学では5つほどそういったバンド活動のできる団体が存在していた。春先に各サークルが新入生向けのライブを行い。それらを見て、新入生は自分に合いそうなところを探すというわけだ。私は最初にライブを見て、部員も比較的多そうなところに加入した。そしてバンドというものを組むことができた。バンド活動といっても詰る所、コミュニケーションの一種なのだと思う。人がたくさんいてもバンドを組むことさえできない人も少なくなかった。私の場合は所属した団体で卒業までに様々なバンドを組む機会に恵まれた。そこでできた交友関係は今も続く大切なモノになっている。実に幸運なことだ。

 

さて、当時使っていたベースはミュージックマンのスティングレイEX。ブラックボディにメイプル指板。あの丸みを帯びたどこかかわいらしいルックス、例えるならワーゲンのビートルか。デザイン性と普遍性の両立を感じさせる。今も好きなデザインではあるが、いざバンドで使ってみると思いのほか使いづらい印象を持った。どうも自分の音が聞こえない。いろいろ試しても納得できる音を出せなかった。他の楽器との兼ね合いもあるので、ベース本体の問題だけではないのだが、「使いこなせない」それが私にとってのスティングレイへの評価だった。このベースは後に後輩に譲ることになる。

 

「いろんなジャンルで使える一生ものを買おう」

 

心機一転、新しいベースを探すことにした。周りの先輩や友人ベーシストから情報収集を始めた。ジョン・ディーコンの影響で「プレシジョンベース」も当然候補には挙がったが、汎用性を考えると「ジャズベース」が勝ると判断せざるをえなかった。とにかく、その1本ですべてをこなせる、言い換えるなら自分のトレードマークになるベースだ。条件を考えてみると「アクティブ・パッシブ切換可」「メイプル指板」「軽い」「20万~30万くらい」というように、自分の中である程度スペックが固まってきた。それらを頭に入れて大都会東京での楽器探しが始まった。

 

御茶ノ水、新宿、渋谷、秋葉原、池袋片っ端から楽器店を巡った。東京に来たばかりなので電車に慣れるという目的もあったが。大体の条件を伝えると「フェンダーカスタムショップ」を薦めてもらうことが多かったように思う。ただ、私自身が、どうにもフェンダージャズベースとの相性がよくないらしい。購入を検討するまでを考えられる個体には出会わなかった。

 

(現在までに2本ほどフェンダージャズベースを購入したことがあるが結局手放してしまった。不思議としっくりこないというか縁のない機種だ。「いつかはヴィンテージという」憧れはあるものの果たして。ちなみにフェンダープレシジョンは1本お気に入りを所有している。やはりフェンダージャズベースだけがどうも合わないように感じる)

 

 

そして、遂にあるメーカーの楽器と出会う。実際のところ、希望条件から考えて、ある程度の目星を付けていたのだがsadowskyというメーカーである。